風況の現地調査

主に、風況観測を行う前に地点選定の目的で行う現地調査と、風況観測開始後に風況解析のために風況観測地点の周辺状況を確認する目的で行う現地調査があります。

風況観測地点選定の目的は、風車計画地点を念頭に、代表的な風況が得られる場所を探すことです。
どんな観測地点がよいのかという話は長くなるため、詳しくはまた別の機会にしたいと思いますが、風況だけでなく、土地制約、電源、資材搬入などの観点で観測地点を選定します。

観測地点が決まったら、どのような向きに観測機器を設置するか(支線の方向等)、周辺に樹木がある場合、どのくらいの伐採が必要となるか、どのように資材を運ぶかなどを検討します(発電事業者と観測業者が同行して行うことが多いです)。

風況コンサルや風車メーカーは、風況観測データを用いて、風車設置地点の風況予測を行います。
風況予測の入力データとなる風況観測データは、風況予測の結果に大きな影響を与えるため、現地の状況を実際に確認し、机上検討では得られない情報を得て、解析条件に反映したり、不確かさとして考慮をします。

風況解析のための現地調査は、風況観測機器が設置されている状態で実施するのが望ましいですが、既に撤去されている場合もあります。
特に、既設ウィンドファームのM&Aに伴う技術DDにおいては、撤去されていることが多いです。

風況解析のための現地調査で確認する項目は、以下の通りです。

  • 設置報告書の記載内容と齟齬がないか。観測状況に懸念点がないか(ブーム取付状況、測器の取付状況など。)
  • 周辺の植生の状況はどうか。観測地点から樹木までの距離、樹木の高さ、樹木の密度状況、樹種など(方位別)。特に主風向の状況が重要。写真(例:8方位以上)及び動画で記録。
  • 地形の傾斜状況(方位別)。
  • マストと鉛直ライダーの標高差、距離、方位角。
  • 風車設置予定地点、ウィンドファーム全体を見渡せる場所などに行く場合は、サイト全体としての風況を把握。
  • 長期補正に用いる可能性のある近隣観測所(アメダス、気象官署、灯台など)の周辺状況の確認。
  • 一般に、方位によって、ウィンドシア、乱流強度が異なります。現地調査の前に、風況観測データがある場合は、方位別風況解析を実施しておき、現地調査の際に解析結果と現地状況を照らし合わせて、要因分析するとよいです。
  • 現地調査は、周辺状況を把握するため、雨や霧がある時は避け、見通しがよい日を選びます。
  • 日が出ている時間で調査を行うため、無理のない工程を計画します。
  • 風況観測地点は、立入禁止のエリアや、アクセスが非常に悪いエリアも多く、単独ではなく、関係者が集まって実施することが多いです。当日の待合せ場所・時間を決めておきます。
  • 観光地ではないため、ナビの目印となる地点が限られています。事前にナビ登録地点を検討しておくと、出発時にスムーズです。
  • 関係者の当日の連絡先もまとめておきます。
  • 以上を元に、工程表を作成し、関係者に配布します。
  • 1週間前位から天気予報を継続的に確認し、荒天が予測される場合は、日程調整をします。

現地調査の服装は、トレッキングなど、軽い登山の時と同じです。作業服を着ることも多いです。

  • 帽子 日よけ、落下物があった際の防護のため、用意します。
  • 長袖・長ズボン 夏でも、長袖・長ズボンが望ましいです。登山道ではないため、草木が繫茂した中をかき分けて歩きます。肌を露出していると、笹やトゲのある植物などによる切り傷の可能性があります。
  • 靴 トレッキングシューズなど、山道を歩きやすく、滑りにくい靴を用意します。現場の人は、長靴や地下足袋を履いていることもあります。
  • 手袋 軍手や登山用のグローブなどを用意します。道のないところを歩く時は、木をつかまざるを得ないときもあり、素手では危険です。用途、時期、状況に応じて、使い分けるとよいです。

持ち物も、軽い登山の時と同じと考えればよいかと思います。以下に、風況調査という観点で、持ち物リストを記載します。

  • 名刺 現地での打合せも兼ねているため、忘れずに携行。
  • 日焼け止め
  • コンパスグラス ブームの取付方位、支線方位を調べるのに便利。
  • レーザー距離計 樹木など、障害物までの距離を計測。
  • 双眼鏡 全風車計画地点にはなかなか行けないため、見晴らしの良い場所から確認をすることも。
  • 地図(観測地点と風車計画地点をプロットしたもの) 観測地点は電波が通じないところ多い。打合せをする際も、大きい地図があると便利。
  • カメラ 望遠、広角、両方あると、風速計近傍、マスト全体像の撮影ができる。
  • モバイルバッテリー
  • 熊鈴、熊ホイッスル
  • 飲み物
コンパスグラス
レーザー距離計
双眼鏡

現地の移動は、同行者の車に同乗させてもらうこともありますが、運転免許は必須です。山道の運転にもスキルを要するため、十分な経験と無理のないルート計画が必要です。平野や沿岸部の調査については、山岳地に比べると、難易度は低いと言えます。

  • 運転免許
  • 山登り技術(初級~中級) 地図読み、山岳気象を含め、安全に登山をできる基礎知識をもっているとよい。

時間に余裕があれば、周辺のウィンドファームや眺望のよい地点に足を延ばしてみるのもよいと思います。10D程度以内にウィンドファームがある場合は、解析に含める必要もあります。

また、余談ですが、地元のお土産や食べ物を、楽しむのも現地調査の醍醐味です。昨日の現地調査のお土産は、「イギリストーストクランチ」「ちびっこ南部詰合せ」「陸奥八仙」にしました。地元の名産品、特産品も調査対象に加えてみてはいかがでしょうか。

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