はじめに
寒い日が続きますね。今日は、寒い地域でのプロジェクトを想定して、凍結(icing)時の風況観測データについて書きます。
多くの風況アナリストが、凍結データの処理に悩まされているのではないでしょうか。
「なんかいつもと違う挙動のような気はするけれど、異常判断した方がいいのか分からない」
「異常値として除外すると、有効データ数がかなり減ってしまう」
凍結は常に発生するわけではなく、断続的に起こります。さらに、完全に凍っている時間、部分的に凍っている時間、疑わしい時間が混在します。この「グレーな時間帯」が、悩みのたねです。
凍結判定について、基準やルールはありませんが、いくつか推奨文書がありますので、それを元に、考え方を紹介していきます。
凍結が風況観測データに与える影響
では、凍結すると何が起きるのでしょうか。
風速計が凍結すると
風を受けて回転する部分が動きにくくなります。
結果として、実際よりも風速が低く表示されることがあります。
風向計が凍結すると
向きが一定になったり、急に不自然な角度に張り付いたりします。
ここで重要なのは、「値は出ているけれども、信頼できない状態が含まれている」という点です。
データが欠測していれば分かりやすいのですが、凍結時は“それらしい数字”が出てしまう。
これが寒冷地特有の難しさです。
凍結判定の考え方
気温だけで判断しない
よくある誤解があります。
「0℃以下なら凍結、0℃以上なら問題なし」
実際は、湿度、降雪、着氷条件などが影響し、0℃以上でも凍結することはあります。
複数の情報を組み合わせる
一つの指標に頼らず、
- 気温
- 風速の不自然な低下
- 風速(平均値/標準偏差)が一定値
- 風向(平均値/標準偏差)が一定値
- 別の高度の風速計、風向計との差異が大きい
- 他の種類の測器(鉛直ライダー、超音波風速計)との差異が大きい
などを組み合わせて考えることが大切です。
白黒をつけようとしすぎない
凍結が生じる状況下では、「完全に凍結」と判断できないことも多く、そのような時は
「凍結の疑いが高い」
「凍結の影響がありそう」
としておき、データ除外はせずに、その程度に応じて、観測データの不確かさに反映するのがよいと思います。
「怖いから全部除外」
「欠測でないから全部採用」
というのは、どちらも極端です。
ぜひ、データの量と質、その両方を意識して、また、いかに年間風況を精度よく予測するかを意識して、凍結時のデータ処理を行ってください。
次は、凍結時の発電電力量の損失に関する話をしようと思います。
参考文献
- IEA Wind Recommended Practice 13. 2nd edition, Wind Energy Porject in Cold Climates, 2017.
- Canadian Renewable Energy Association Operations & Maintenance: Best Practices for Wind Farm Icing and Cold Climate Health & Safety, 2020.