寒冷地での発電電力量の損失

寒冷地シリーズ第2弾です。今日は寒冷地での年間発電電力量(AEP)を予測する時の損失について、書きます。

寒冷地における風力発電では、風況そのものだけでなく、冬季特有の停止・性能低下が発電電力量を押し下げる要因となります。主な損失の要素は次の3つです。

  • 着氷(icing)による発電量の損失: 風車ブレードの空力性能の低減、センサ凍結による制御停止
  • 低気温時停止(low-temperature shutdown)による損失: 風車メーカーの運転下限温度を下回った時の停止
  • アイススロー(ice throw)防止のための停止による損失: HSE(安全)上の運転制限・運用停止

着氷は、着氷イベント発生時の「段階」 を時間軸で考えます。「気象学的着氷(Meteorological icing)」は着氷可能な気象条件が揃っている期間、「計器着氷(Instrumental icing)」は構造物やセンサーに氷が付着し、観測可能な期間、「ロータ着氷(Rotor icing)」は、風車ロータ(ブレード)に氷が付着している期間を意味します。

IEA Wind RP 13 寒冷地風力の推奨基準では、サイトの着氷のクラスを1~5で表し、気象学的着氷、計器着氷を年間の割合として、着氷損失(icing loss)をグロス年間発電量に対する損失の目安として示しています。フィンランドの研究機関VTTでは、IEAのカテゴリに基づく、Icing Atlasを公開しています。

IEA Ice class気象学的着氷[% of year]計器着氷[% of year]着氷損失[% of グロスAEP]
10 – 0.5<1.50 – 0.5
20.5 – 31 – 90.5 – 5
33 – 56 – 153 – 12
45 – 1010 – 3010 – 25
5> 10> 20> 20

低気温による停止損失は、「風速と気温の同時確率分布」が、風車メーカーが定義する運転下限温度を下回る時間帯の発電量を積算して、見積もることができます。

非常に低い気温は、高気圧と関連し、風速が低いことが多く、サイトにおける風速と気温の相関関係を評価した上で、発電量の損失を見積もることが重要です。

アイススロー(回転するブレードからの氷の塊が飛散すること)は、発電性能というより公衆安全、作業安全の問題で、対策は運用ルール(停止・立入制限・警告・復帰条件)によることになります。

この停止による損失は、サイト・規制・運用方針で振れ幅が大きく、単純に一律の損失[%]を設定するのは、難しいといえます。

参考文献

  1. IEA Wind Recommended Practice 13. 2nd edition, Wind Energy Porject in Cold Climates, 2017.
  2. VTT Icing Atlas https://projectsites.vtt.fi/sites/wiceatlas/www.vtt.fi/sites/wiceatlas.html

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