はじめに
2026年5月に、MEASNET(風力エネルギー分野における国際的な計測機関ネットワーク)から、ライダー性能検証のための手順書が公開されました1,2。
この中で、技能試験(Proficiency Test, PT)という言葉が出てきますが、あまり聞きなれない人もいるかもしれません。
ライダーの性能評価に関連して、IEC規格、ISO規格では、様々な「試験(test)」という用語が出てきますので、少し解説をしたいと思います。
まずは、冒頭に出てきた「技能試験」ですが、これは、試験を実施する機関が正しく検証試験をすることができるかを確認する試験を意味します。
即ち、ライダー自体の性能試験ではなく、試験機関を評価する試験です。
一方、ライダー自体の試験には、以下の試験があります。
- 校正試験 calibration test
- 等級分類試験 classification test
- 感度試験 sensitivity test
- 検証試験 verification test
校正試験
校正試験は、基準マストに設置されたカップ式風速計観測値とライダー観測値を比較し、校正式を得るための試験です。ライダーは、必要に応じて、校正した上で出荷されます。
等級分類試験
一方、等級分類試験は、ライダーが気象条件の変化にどの程度敏感かを定量化し、それに起因する追加不確かさを評価する試験を意味します。
具体的には、次のような条件によってライダーの誤差が変化するかを調べます。
- 鉛直シア(Wind Shear)
- 風向ヴィア(Wind Veer)
- 乱流強度(TI)
- 流れの傾斜(Flow Inclination)
- 雨
- 気温、など
つまり、「正確かどうか」ではなく、「どのような気象条件で誤差が増えるか」を評価する試験です。
通常、試験サイトは、平坦地形です。また、試験サイトの固有の気象条件下での試験となります。そこで校正したライダーが、別のサイトで同じ性能を示すとは限りません。したがって、等級分類試験をすることによって、校正試験を実施した試験サイトと観測キャンペーンを実施するサイトとの違いによるライダー観測の不確かさを評価するために、等級分類試験を実施します。
上記で挙げた気象条件を環境変数(Environmental Variable, EV)と言います。
等級分類試験では、各環境変数に対するライダー観測精度の感度を評価するため、規定されたビン幅ごとに解析を実施します。この試験では、環境条件の変化に対する測定結果の応答特性を確認することから、感度試験とも呼ばれます。
検証試験
性能検証試験(performance verification test)とも言います。この試験の目的は、ライダーが要求精度を満たしているかを確認することです。ライダーを参照マストの近傍に設置し、同じ高さの風速データを比較して、回帰式の傾き、切片、決定係数などを評価することにより、精度検証を行います。
冒頭で紹介したMEASNETの新しい文書は、この検証試験及び計測の不確かさ評価を行うにあたって、IEC61400-50-2に対する共通理解、実施方法に関する推奨を提示しています。また、検証試験を行う機関の信頼性を確保するため、技能試験に関する要件も定めています。
参考文献
- Measnet unveils an innovative procedure for Ground-Based Lidar Verification, 2026/5/28
- Measnet Remote Sensing Expert Group, Procedure for Ground Based Lidar Verification, 2026-5.
- IEC 61400-50-2:2022, Wind energy generation systems, Part 50-2: Wind measurement – Application of ground mounted remote sensing technology
- ISO/IEC 17043, Conformity assessment – General requirements for the competence of proficiency testing providers, edition 2.0 (2023)